2016年6月4日土曜日

巨額汚職事件にゆれつつも苦境を乗り切るマレーシア・ナジブ首相のしたたかな統治術

巨額汚職事件にゆれつつも苦境を乗り切るマレーシア・ナジブ首相のしたたかな統治術

世界の捜査当局が注目している「1MBD」問題にゆれているマレーシアですが、マレーシア国内での捜査は政治圧力により中断しています

マレーシア政府系ファンド1MDB巨額汚職捜査進まず、政治圧力の影響で

このマレーシアの現状を住友商事グローバルサーチ国際部シニアアナリスト 石井順也さんが解説をしています。





YOMIURI ONLINEより

苦境を乗り切るマレーシア・ナジブ首相のしたたかな統治術


マレーシアのナジブ首相の苦境が続いている。
 首相を苦しめる最大の問題は、政府系投資会社ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)をめぐる一連の疑惑と巨額の債務である。
 1MDBは、2009年にナジブ首相が主導して創設された投資会社であり、創設以来、同首相自身が顧問会議のトップとして経営に関与していた。マレーシアを先進国入りさせるプロジェクトの一環として期待されたこの投資会社は、14年3月末時点で約420億リンギットに上る巨額(GDPの3.9%、国家予算の16%に相当する金額)の負債を抱え込む状況に陥った。さらに、不正経理の疑惑も指摘されている。
 与党の統一マレー国民組織(UMNO)の長老であるマハティール元首相は、かねてからナジブ政権に対して批判的であったが、1MDB問題についても激しい批判を浴びせ、15年4月には首相の辞任を公然と要求するに至った。


 事態をさらに深刻化させたのが、同年7月のウォールストリート・ジャーナル紙による汚職疑惑の報道である。この報道によれば、1MDBからナジブ首相の個人口座に約7億ドルが送金されたという。首相への批判は一気に高まり、野党やマスメディアに加え、与党UMNOの内部からも批判的な声が上がった。マハティール元首相からの批判は一層厳しくなり、UMNO副総裁であるムヒディン副首相やシャヒー地方・地域開発相も批判的な発言を行った。
 これを受けて、ナジブ首相は、ムヒディン副首相とシャフィー地方・地域開発相を更迭し、同時に1MDBの捜査の責任者だった法務長官を交代させ、大手オンラインメディアのアクセス制限や経済紙の発刊停止に踏み切った。こうした対応は更なる反発を呼び、同年8月には首都クアラルンプールで反汚職を掲げる大規模デモが発生した。
 こうした中で、法務長官は16年1月、「ナジブ首相に対する送金は、サウジアラビアの王族からの個人的な献金であって1MDBからのものではなく、犯罪性は認められない」として捜査の終了を宣言した。同年4月にはサウジアラビアの外相も個人的な献金である旨説明した。本件について調査を行っていた公的会計委員会も、最終報告書において、1MDBのガバナンスの問題を指摘しながらも、犯罪性はないとの見方を示した。同年5月にはマレーシア中央銀行も同様に捜査の終了を宣言した。
 公的会計委員会の最終報告書の提言に従い、1MDBの経営陣は辞任し、顧問会議は解散するに至った。議長であるナジブ首相も退任した。1MDBの主要資産は財務省が管轄する投資会社に移管され、1MDBは今後、資産売却や債務返済など限定された業務にあたることになった。
 こうしてマレーシア国内においては、捜査やナジブ首相の責任追及は終了し、1MDBも実質的に解体が進められ、問題の幕引きが図られた。
 1MDB問題はこのまま収束するかに見える。しかし、一連の騒動は、ナジブ政権に対する反対勢力の結集を促すことになった。

「それでも盤石」のナゼ?

 野党勢力は、1MDB問題を取り上げて、政府不信任案を提出するなど政権への批判を強めた。マハティール元首相をはじめとする与党UMNO内部からも批判者が現れたのは前述の通りだ。同元首相は、16年2月、UMNOから離党した上、かつては仇敵ともいうべき関係にあった野党勢力と協力し、ナジブ政権の倒閣に向けた市民運動を盛り上げるという前代未聞の行動に出た。しかも、マレーシアの王族であるスルタンからも1MDB問題に対する懸念の声が聞かれるようになった。
 このように、ナジブ首相は、野党、元首相を含む与党内の反対派、スルタン、マスメディアといった多方面から攻撃を受け、支持率も大きく低下した。次回総選挙は18年に予定されているが、一見すると総選挙前に退任に追い込まれてもおかしくない状況である。
 しかし、筆者が3月にマレーシアを訪問し、政府関係者、野党の国会議員、ジャーナリスト、学者など多方面で情報を収集したところでは、近い将来にナジブ政権が倒れることを予測する人は皆無であり、誰もがナジブ政権の盤石ぶりを強調していた。それはなぜか。


続きはYOMIURI ONLINEよりお読みください

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